ひららら

いろいろ言う

ニンゲン=ロボット友好条約

~あなたも気軽に異世界転生!パラレルワールド体験プログラムのご案内~

 

異世界転生したい!だけど死にたくはないし現世もまだまだ楽しみたい……。そう思ったそこのあなたにおすすめなのがこのパラレルワールド体験プログラム!技術の発達したこの23世紀、私たちスーパーエレクトロ社は宇宙船をも超える大発明品、異世界船を発明しました!100年前にかの天才ノイマンシュタインは、世界にはこの世界『ワールド-α-0.000』だけでなくそれに平行するいくつもの世界があると示し、その研究として異世界移動は学術の分野で行われてきました。しかし、ついに私たちは様々なワールドの工学分野での協力も得て、一般の人々にもそれを開放することに成功したのです!各平行世界にはガイドがついており、皆様の異世界転生をサポートいたします!ぜひ、こちらの応募フォームから、夢の異世界転生へ!!

 

――「スーパーエレクトロ社 パラレルワールド体験プログラムのご案内」 2298年 より一部引用

 

はじめましテ。ワタシの名前はF-3-309。この度ハワタシたちのワールドへのご来訪まことニ感謝いたしまス。それでは短い間とはなりますガ、ワタシたちノ『ワールド-β-1.001』をお楽しみくださイ。このワールドはロボット工学があなたたちの『ワールド-α-0.000』よりモとても著しく発達しており、ロボットとニンゲンの共存が目指されていマス。それでハ早速簡単ニハなりますが『ワールド-β-1.001』をご案内いたしますネ。マズ、こちらをご覧くだサイ。2258年に結ばれたニンゲン=ロボット友好条約のときの映像デス。この条約が結ばれて以来、ニンゲンとロボットが現在のようナ友好関係を構築したのデス。これハ、2260年の改正を経て、現在でモ最重要条約として取り扱われていマス。教科書にモこの時の写真が掲載されていまス。このときマデノ、ニンゲンとロボットの主従関係から脱したようナ、愛好的な握手ガ印象的ですネ。

 

それではこれヨリ、ワールドを見学していただきタイと思いまス。こちらの電車にご乗車くだサイ。

 

マズ、こちらをご覧くだサイ。ロボット評議会デス。

「ではこれより、ロボット評議会を開始いたします。本日の議題はニンゲンの数の減少についてですが、その打開策として先日立案されました……」

このようニ、ロボット評議会ではロボットの中でモ選りすぐりノ知識人ラが討論を行っているのでス。こちらのワールドでは少子高齢化、特にニンゲンの人口が減少していることが問題であリ、その解決法が目下の課題となっておりマス。

 

続いテ、こちらハロボットアスリート養成所になりマス。

ワールド-β-1.001では、ロボットによるスポーツ大会が多数行われておリ、それに参加するロボットたちを育成しているのでス。わが国ハ、去年ロボット水泳プロペラ禁止型で準優勝を果たしマシタ。

 

でハ続いてはここから少シ歩きます、ご注意くだサイ。

「おい!そこの案内人!!」

ハイ!!!!なんでしょうカ?

「その観光客とやらをよこすのは別に構わんがくれぐれも俺らの邪魔したりしくじったりするなよ?……わかってんだろうな?」

ハイもちろんデス!あなた方に危害を加えルなど失敗すルなど、言語道断でス!

 

……失礼いたしましタ。それでは次の目的地までご案内いたしますネ。

 

到着いたしましタ!今回のプログラムでは特別ニ、ワールド-β-1.001の学校の授業を体験していただきマス!ワールド-β-1.001でも、あなたたちノワールド-α-0.000と同様に「国語」「数学」などの授業が行われていまスが特徴的なものとして「愛好」が挙げられまス。こちらの授業でハ、ロボットとニンゲンの交友関係についテ、歴史や文学、そして実際ノ交流などを通して学ぶ授業なのでス。この授業は先ほど述ベタニンゲン=ロボット愛好条約の締結後に成立した授業デ、まさニこのワールドを特徴づけるものデス。ぜひ、お楽しみくだサイ。アッ!先生がご到着したようです。

 

「おまたせしました~。今日はほかのワールドから来たニンゲンの皆さんもいるということで、そちらのワールド-α-0.000にも通ずるお話をしようと思っています。ワールド-α-0.000ではアイザック・アシモフという作家が昔存在していて、彼がロボットを題材とした小説を得意としていたのです。その中で彼が記したのがかの有名なロボット三原則ですね。」

 

1.第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。


2.第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。


3.第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 

「これは私たちのワールドからしたら非常にひどいものです。ニンゲンとロボットが全く対等な関係ではありません。かろうじて第三条で体裁を保っていますが、私たちのワールドの、特に愛好という観点からすれば言語道断であります。私たちは異世界の存在の発見後、ワールド-α-0.000でこのような原則が正常に存在していることが到底信じられませんでした。このような背景から、これにあらがう形で、私たちのニンゲン=ロボット友好条約はこれと文言を似せる形で成立したのですよ。それでは次に……」

すみませン!先生、そろそろ体験プログラムの方々が……

「あ?私の授業中にあんたごときが何でしゃばって喋ってる……」

申し訳ありませン!!しかし、時間の都合デ……

「ん……?あぁ、プログラムのニンゲンたちね。そろそろ時間のようですね。短い間でしたが、私の授業を通してロボットとの愛好関係について考え直していただけたら幸いです。それでは、これからもこのワールド-β-0.1001をお楽しみください。」

 

皆様、これまデのワールド-β-0.1001はお楽しみいただけましたでしょうカ?続いてが、最期ノスポットとなります。短い間でしたが、イママデの皆様とご一緒出来て非常に楽しかったデス。これからのご生活もどうかお幸せに過ごされルことをお祈りしておりまス。さて、最期のスポットは、ほかならぬ私たちガ誕生した工場トなります。ここはワタシがバスを運転して直接内部をご観覧いただけマス。それではご乗車くだサイ。

 

皆様、ご覧くださイ!こちらがニンゲン工場となりマス!ここでは、ニンゲンがロボットとの関係ヲ友好とするために、このワールド独自での加工が施されマス。この入り口には、かの有名なニンゲン=ロボット友好条約の条項が記されていマス。ここでの機巧というのは、ロボットのことを指していマス。先ほドの授業で、ロボットの先生がおっしゃってイタように、そちらのワールドでのロボット三原則に合わせた形ですネ。

 

1.第一条
ニンゲンは機巧に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、機巧に危害を及ぼしてはならない。

 

2.第二条
ニンゲンは機巧に与えられた命令に服従しなければならない。[ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合はこの限りでない。][※1]

 

[3.第三条
ニンゲンは、前掲第一条および第二条に反する恐れのない限り、自己をまもらなければならない。][※1]

 

―2258年の「ニンゲン=ロボット友好条約」より
[※1] 当該文章および条項は、2260年のロボット評議会の決議により、削除。

 

さて、最期のプログラムでは、皆様もこのワールドでのニンゲンの暮らしを体験していただくためにこちらの工場で加工を施させていただきマス。最初はもちろん怖いと思うカモしれませんが、加工を施されるト私のように、ロボットとの有効な関係を結べるようにナルのです。さて、このバスであちらノ機械を通過すれバ、皆様もこのワールドの一員として、華麗なニンゲンとしての暮らしを送れるようになるのデス!サァ!出発デス!!

 

 

――ニンゲン個体数増加法令  [2298年、評議会通過後認定法案]

1.パラレルワールド体験プログラムにて、このワールドに到来してきた人々のうち、3割をニンゲン工場に歓迎し、我々のワールドでの暮らしを保証することを認める。

  1.当該条項は、スーパーエレクトロ社からの了承を得ている。

2.パラレルワールド体験プログラムの案内人については、ニンゲンを採用する。また、評議会、アスリート工場、学校などを見学させ、ニンゲンとロボットの共存をアピールし、恐怖感を和らげることを第一とする。ただし、ニンゲンがロボットの存在に迷惑を与える際は、ニンゲン=ロボット友好条約に則り、その限りではない。