ひららら

いろいろ言う

独身女と妊娠と日本酒

第一話↓まぁ読まんでも別になんとでもなる

 

本編↓読め

 

「キレそう。」

いつものごとく丑三つ時に我が家に転がり込んできた美羽に私はビールの缶を開けながら言う。

「なに?いつもじゃない?」

いつもならこの時点で家から追い出すところだが今日の私はそれどころじゃない。

「この些細な休日。至福の日曜日。美羽もいない。友だちもいない。」

「なに?自虐?」

私は無視して続ける。

「私は久しぶりに2000㏄のバイクを走らせに行った。」

「あぁ、あのそれで会社に通勤したら人の目が…とか上司に言われて止められたやつね。」

そのことを思い出させるんじゃない。より怒りが募る。

「そしたら。そしたら!!」

「盛り上がってきたわね。」

「なんと!」

「おお!」

「今回!!」

「はい!!」

「ついに!!」

「はい!!!」

「ピタリ賞が!!!」

「はい!!!」

「出ませんでした~~~」

「あぁ~~~~~」

「じゃないわよ!!!!!!」

何が悲しくて家でゴチしなきゃいけないんだ。私は羽鳥さんじゃない。

 

「……私がウキウキでツーリングをしてたのに、急に前を女に抱かれた男が走らせてるバイクが颯爽と駆け抜けていったわ。」

私が冷静にこう言うと美羽が急に部屋を出てトイレに向かった。

「きゃはははははははははあはあはっはっはっふ、ふふふう、ひ~~~~~~~~~~~~」

トイレの方からこんな声が聞こえてきた。

「わざわざそんなところまで行って笑い転げんじゃねぇ!!」

「ちがっひ~~、笑ってるんじゃないわよふはっ、そんなかわいそうなことひゃは、友達として笑えるはずふははははないじゃないのっひゃぁ~~」

「めちゃめちゃ笑ってんじゃないの!!」

「ちが、妊娠よ妊娠、急にお腹が、そう、妊娠よ、ひっひっふ~」

「あんた経験ないくせになにが妊娠よ!!」

「は~~~~~~~落ち着いた、そっち戻るわ。」

そういって美羽はこっちに戻ってくる。

「ふはっ、ちょごめんもう一回妊娠してくる。」

「勝手に双子産んでんじゃないわよ、もうここで産みなさい。」

そうして5分ほど美羽が妊娠し続けた後ようやく話し始めた。

「別にそのくらいは見逃してやりなさいよ?別にそいつらも見せつけるために二人で来たわけじゃないんでしょうし幸せで何よりじゃないの。」

「いや私もそれくらいならちょっと頭の中の中指二千本立てるくらいで済んだわよ。」

「勝手に頭ん中に千手観音2体も置くんじゃないわよ。」

「問題はその後よ。私もそこまで子どもじゃないからその程度では仏の顔を向けれるわ。ただちょっとこのあと二人がラブホとか行くのかと思って追っただけ。」

「考えが子どもじゃないどころかアダルトね。」

「そんで追ってたらよぉ!」

私はビールの残りを一気に飲む。

「なに急に、ほんとにラブホとか行っちゃったの?」

「知らないわよそんなん、なぜならサツに一時不停止で捕まったから。」

私は三つ子を産みに行こうとする美羽を引き留める。

「か、かわいそうにっへっへっへっへ」

へっへっへじゃねぇ!7000円も罰金取りやがって!!

「ていうかなんなん?前のいちゃつきクソカップルバイクは止めんかったくせに私だけ止めやがってよ、いつからこの国は非リアにこんなにも厳しい国になったんだよ。そんなんだから少子高齢化進んでんだわ。」

「痛烈な政治批判だねぇ。非リアから国民を守る党じゃん。」

からかい上手の美羽さんは無視して私は財布の中身を見る。諭吉と一葉がいないのはいつものこととして今日はもう英世さんすらいない。どれもこれもラブホ直行いちゃつきカップルのせいだ。

「いや別にいちゃつきに行ったとは限らないでしょうに……」

絶対行ってる、あの速さと顔は行ってる。いきいきとしてたもん。あれはいく顔してる。色んな意味で。

「どんな意味でいくんだろうねぇ?」

交通違反男がどこに何出すかは知らんが私は国に7000円出してんだわ。

「国家に理解らせられてんねぇ~」

「あぁ~~~腹立ってきた、酒飲むぞ酒!」

そうして私は冷蔵庫から日本酒を取り出してグラスにつぐ。

「お!莉音さんのあの気持ちが高ぶったときに出てくる日本酒だ!2か月ぶり7回目の登場です!!」

何の記録だとかいうツッコミをもほったらかして私は飲み続ける。もう誰も私を止められない。警察には止められたけど。そんなこと考えたらまた腹立ってきた。

「ふつう日本酒そんなガッパガッパ飲めないって…いっつも次の日死んでるじゃんか。明日平日だよ?」

美羽の珍しく優しい助言もそこそこに受け止め私は3杯目を注ぐ。

 

「今夜は祭りじゃ~~~~~~~~~~~~~~!!」

 

 

「……はい、莉音さんなんですけど、なんか突然体調を崩されたみたいで、私の方から伝えとくように言われたので、はい、すみません、よろしくお願いします、すみません。」

定期的に美羽からこんなことを告げられる上司の頭の中は、ますます二人の関係を訝しんでいくのでした。