ひららら

いろいろ言う

永遠の二百メートル

「ずっとあなたのことが好きでした。付き合ってくれません…か?」

「……はい!」

 

こんなありがちな告白からもう早くも一年が経とうとしているそんな時期。

俺 ──丈と彼女 ──美波の関係はこの冬の寒さのように冷めきっている。学校ではクラスも分かれてほとんど会わず。俺も美波も部活が忙しくて放課後や土日もうかうかデートしてられない。この前デートしたのなんてもう二ヶ月も前だ。そんなわけで最近は部活が終わった後、帰るときにしか会うことがない。それでいて美波は文句一つ言わないんだから愛も冷め切ったもんだ。倦怠期か??

 

午後七時十五分。完全下校時刻が迫るこの時間に俺たちは毎日昇降口で待ち合わせをしている。

「ごめん、ミーティングが長引いて…。」

美波はそう言ってやって来た。

「あぁいいよ全然。…帰ろっか。」

そう言って靴を履いて俺たちは歩き出す。

俺の高校は校舎を建て替えたときに設計ミスしたのかなんなのか知らないが校舎と自転車の駐輪場の間が馬鹿みたいに広い。体感二百メートルはある。朝寝坊した時なんかはもう絶望だ。何度この距離を恨んだことか。

「今日寒いね〜。」

「冬だからね。」

「……………………………」

「……今日の古典俺当たるはずだったんだけどさ、なんか先生が名簿忘れたらしくて飛ばされたんよね、ラッキーだったわ〜。」

「へぇ〜そうなんだ、よかったじゃん。」

「……………………………」

関係も冷え切った今となってはこんなクソみたいな会話しかできない。何が古典の授業で当たらなかっただ、どうでもよすぎるだろ。

 

…この二百メートルが永遠にも感じられる。辛い。自転車に早く乗りたい。帰りたい。

 

 

午後七時十五分。いつもより少し早く俺が昇降口の前に行ったら珍しく美波はすでにそこで俺を待っていた。

「あれ?珍しいな美波のほうが早いなんて、ごめん待たせた?」

「あぁいや全然、ちょっと早く切り上げてきただけだから…。」

あのいつでも部活第一の美波が部活を切り上げたなんて珍しい。そう思いながら俺は靴を履き替える。でもまぁ俺としても好都合だ。

「じゃあ、行こ?」

美波が言う。美波からこんなことを言うなんて珍しい。最近は俺から話しかけないと何も話してくれなかったのに。そして遠い遠い駐輪場へと歩を進めた。

「…………」

気まずい。今日はいつも以上に気まずい。どうやって話を切り出したらいいものか……。気持ち百メートルを過ぎた頃、美波が話しかけてきた。

「ね、ねぇあのさ、」

「ん?」

「ちょっと…話、いい?」

こんな周りに何もない妙ちきりんなところでか?とは思ったがまぁ完全下校時刻も近く周りには誰にもいないようだったので俺は素直に了解した。

「話って?」

「えっとね、丈くんはもう覚えてないかもしれないけど…。私たち、今日で付き合ってちょうど一年じゃん…?だから……」

そう言って美波はバッグの中から何やら紙袋を取り出した。

「これ…一年ありがとうっていう……。マフラー、似合うと思って…。私、あんまり話すの得意じゃないし愛想も良くないし最近は部活ばっかしてて全然丈くんと一緒にいれないけど……。それでも丈くんは毎日私を待ってくれて、とても嬉しかった。だから、もし、もしも丈くんが嫌じゃなかったらこれからもよろしくねって意味も込めて…。」

びっくりした。美波がこんなに俺を大切に想っててくれたなんて。なにが愛も冷め切っただ。勝手に俺がそう思い込んでただけだった。美波はずっと俺のそばにいてくれたんだ。

「あ、あぁありがとうとっても嬉しい。それ…でさ。」

俺は続ける。

「俺も覚えててさ、一年記念日。これ…被っちゃったけど。美波が好きかは分からないし。」

そう言って俺は前に買ったマフラーを美波に渡す。

「実はもう美波は俺のことなんてどうでもいいと思ってるんじゃないかって疑ってたんだ。でも、さっきの言葉聞いて俺がバカだったなって。むしろ勝手に美波が冷めたと思ってた俺のほうが冷めてたよ。本当にごめん。」

「ううん、そんなことない。だってちゃんと記念日覚えててくれたし、こんなものも買ってくれて…。部活も忙しいはずなのに。」

それは美波も同じだろ。そう言いたかったが言えなかった。

「ありがとう…大好きだよ。」

そう言いながら美波が俺に抱きついてきたのだ。

「…あぁ、俺も大好きだよ。これからもよろしくな。」

俺は美波を優しく受け止めた。

 

 

「今日寒いね〜。」

美波が言う。マフラー巻いてるのに。

「まぁ冬だからねぇ…って急にどうした!?」

「いいじゃん!寒いから!!」

「…まぁいいか。寒いもんな。」

そうして俺たちは、お互いの手を温めながら遠い遠い駐輪場を目指した。

 

この二百メートルが永遠だったらいいのに。俺は着々と近づいてくる自転車を恨めしく思ったのだった。

 

 

 

〜あとがき〜

どうも。ひらららです。まずなぜこんな小説を書こうと思ったのか。わかるこれは黒歴史になる確実に。完成度低いし。なんか読み終わったあと丈くんちょっと性格悪くね?とか考えてしまったけど、ごめん丈くん少なくとも僕の頭の中では君もいい子だったんだよ。最後読み直したけど展開あっさりしすぎててびっくりしちゃったもん。まぁ動機はこれだよ。

 

なんとなくこれ頭に残ってて、こういう話見たいなって思ったので深夜テンションで書き上げました。無いもんは作るの精神。約2000字です。深夜に書いたのでその程度の完成度です。絶対あとで後悔してる。一つだけ分かりやすい小ネタを入れたので気づいてくれたら嬉しいな。というわけで今日はこの辺で。まさか僕も完全オリジナル小説書き上げる日が来るとは思ってなかったよ。それでは〜。